アメリカ製LRV、登場

 実に数十年ぶりとなるアメリカ製の路面電車(LRV)がポートランドにお目見え。
(参考=Railway Gazette International)
 実際には5月に納入されて試運転を行っていたようですが、「formal unveiling」ということなので、正式にお目見えしたということでしょう。
 製造メーカーはオレゴン州Oregon Iron Worksの子会社、United Streetcar.LLC*1。Oregon Iron Worksというのは直訳すれば「オレゴン鉄工所」でしょうが、サイトを見ると橋や船やロケット発射台や、いろいろな分野を手がけているようです。登場したのはメーカー形式「10 T3」と呼ばれる3車体連接車で、両端の高床車体に台車を配し、台車なしの中間車体の床面をレール面から350mmとした部分低床車。アメリカ国産といっても一から新しく開発したわけではなく、チェコシュコダ(SKODA)との提携で、技術移転を受け製造されています。車体デザインをはじめ、動力部分などの技術面も現在ポートランドで活躍中のシュコダ製「10T」形を踏襲し、さらに一部の電気部品はチェコから取り寄せているとのことです。
 というと、まるでほとんどチェコ製のようですが、ちゃんと「バイ・アメリカ条項」*2に適合しており、れっきとした「アメリカ製」車両です。つまりはこれからLRTを新たに建設する場合、United Streetcar製の車両を導入すれば「バイ・アメリカ条項」を確実にクリアでき、政府からの補助を受けられるというわけですね。ちなみに今回の車両製造に当たっては政府から400万ドル(約3億8000万円)が投じられているようです。今後も全米各地でLRTが整備されることを見込んで、国内の産業活性化にも結びつけようという思惑なのでしょう。
(参考=wikipediaアメリカ版(関連ソースもあり)
 ポートランドでは路線延長に向けさらに6編成の導入を計画しているほか、アリゾナ州ツーソンに建設されるLRTにも7編成が導入されることになっているそうです。出足は順調ということですね。

 今回のアメリカ以外にも、ポーランドのバスメーカーが新たにLRV製造に乗り出したというニュースもあります。LRTを含めた都市鉄道は、産業としては確実に21世紀の成長分野でしょう(運営面ではどうかわかりませんが)。そういえば日本でも先日、狭軌では国産初の100%低床車、豊橋鉄道T1000形が「ローレル賞」を受賞しましたね。

これはアメリカ製ではありません!豊橋鉄道T1000。外観も車内もすっきりしていていい車両です。

*1:LLC=Limited Liability Company

*2:アメリカ政府の予算が投入される公共事業は、調達コストの6割以上がアメリカ製品であること、という法律。他にもアメリカにはいろいろムチャな法律があるようで、アメリカに鉄道車両を納入している日本メーカーは苦労しているようです。