ワシントンDC地下鉄追突事故 在線検知に不具合か

 6月22日(アメリカ現地時間)に発生したワシントンDCの地下鉄事故ですが、現場付近の軌道回路の装置が事故の数日前に交換されて以降、列車の検知が正常に行われていなかった模様です。
(参考=7月1日付CNNワシントンポストはトップニュースだった模様)

 6月26日に事故現場付近の軌道回路に異常が見つかったという報道を取り上げましたが、異常が見つかった軌道回路は、事故の5日前にインピーダンスボンド*1を交換しており、その後断続的に列車が検知できない不具合があったとのことです。
 軌道回路は、レールを電気回路の一部に使い、その区間に列車がいること(在線)を検知するシステムです。これによって信号の表示を変えて衝突を防いだり、あるいは踏切を動かしたりするわけですが、在線検知できていなかったということになれば、今回の事故でいえば先行列車がいることを自動運転システム・保安システムが検知できておらず、後続列車を進行させた可能性が出てきます。
 しかし、一般的に軌道回路というのは何らかの故障があれば在線の状態になるように設計されているはずです。踏切の動作を終わらせたりするのに使われる軌道回路(開電路式)は故障した場合、列車がいても在線を検知できない状態になるそうですが*2、もしかして全区間でこちらが使われているんでしょうか?
 また、6月26日に運転士が非常ブレーキボタンを扱ったようだとの報道を紹介しましたが、事故現場の約130m前からブレーキが扱われたとみられ、約40m前からは急ブレーキの痕跡がレールに残っているとのことです。これで「車両のブレーキ故障」という可能性は大分減ったことになります(もっとも、この時に作動したのが日本でいう「保安ブレーキ」で、常用ブレーキは故障していたという可能性は否定できないでしょうが)。
 これまで、事故車両が同地下鉄で最古参の1000系であることなどがクローズアップされていましたが、どちらかといえば運行システムのほうに問題がありそうな感じですね。

*1:軌道回路の境目に設置する装置。帰線電流(レールを伝って変電所に戻る電気)だけを隣のレールに通し、信号電流はシャットアウトしてそれぞれの回路の独立を保つ

*2:踏切の動作を停めるための軌道回路が故障時に在線状態になってしまうと、実際には列車が通り過ぎていないのに通過したことになって遮断機が開いてしまい危険なので、通常の軌道回路(閉電路式)とは逆の動作をするようになっている